玄米は毒は危険なの⁉
玄米を食べるとお腹が痛くなる。これって、毒が原因なの⁉と心配している声をよく聞きます。
確かに玄米には毒にあたる物質が存在します。
本日はその毒と加熱(調理)の面からその安全性について考えていきたいと思います。
それでは、始めましょう!
アブシジン酸
種は乾燥した冷暗所で保存すれば、なん百年
も何千年も生き続けられると言われています。
玄米は正に種そのものです。
アブシジン酸は酵素阻害剤として種の内側
かつ胚乳の外側を取り囲み、種を酸化させ
ないようにして、種の寿命を(環境が整って
いれば)無限に守っています。
玄米だけでなく、あらゆる植物(特に種子)
は、移動して逃げることができません。
そのため毒を持って、発芽するまで、
自ら種を守っています。
種が発芽すると酵素阻害作用は解除される
ため、ひとや動物たちも、食べられるよう
になります。
アブシジン酸は乾燥や塩分、低温などに
反応して合成され、その植物がそれらの
刺激に対応できるようにするための物質
を作らせたり、休ませたりしています。
例えば、乾燥が続くとその量は増加し、
水分が多くなると減少します。アブシジン
酸が増えると葉が気孔を閉じ、植物内が
乾燥するのを防ぐようになったり、
乾燥状態の場で(生きていられなくなる
ため)芽を出さないように調節したり、
しています。
昔の人は自然と玄米を搗き(おそらく
分搗き米程度)水に浸し柔らかくして、
食べやすくしていたようです。
アブシジン酸が人体に悪影響を及ぼして
いるといわれる原因の一つに酵素阻害剤
として働いてしまうからというもの。
人体では5000種類もの酵素があり、
食べることだけでなく、考えたり、
手を動かすことについても酵素の働き
が関わっています。
その働きが阻害されれば、やはり不調
を感じるのは当然のことと言えます。
また、酵素が働かないことによって、
すい臓が酵素を過剰に出すようになり、
負担がかかってすい臓がんに移行する
恐れもあるということです。
また、一方の説ではアブシジン酸が
細胞内のミトコンドリアを傷つけて、
低体温や疲労感を感じて、免疫力を
落とすというもの。
しかし、これらの説が本当であって害
があるかどうかは証明されていません。
もし、確かであっても、玄米にはそれ
以上にメリットの方が多くあると思わ
れます。
様々な食品にメリットデメリットがある
のは当然のことです。「玄米は完璧」と
言われる分、つつかれる場も多くなって
います。
しかし、米国環境保護庁(EPA)、
オーストラリア農薬・動物用医薬品局
(APVMA)、欧州食品安全機関(EFSA)
にはアブシジン酸の安全性に関して
危険性はないとの発表令和3年10月
食品安全委員会農薬第三専門調査会で
まとめています。
特にアブシジン酸は加熱に弱い為、炊い
たら毒性はなくなりますし、水につける
(水分が多くなる)ことでその量は減少
していきます。
その物質を単体で調べた実験の場合は、
それが体内で、同じ様に働いているか
どうかは実のところは分かっていません。
■アブシジン酸などを残留させない炊き方
前述のようにアブシジン酸は玄米の水分
が多くなることによって、アブシジン酸
が減少し、毒性が解除されると想定されます。
その為、玄米は17時間以上水に浸けます。
その間に2~3度水は変えて、毒素を十分に
捨ててから炊くと良いと言われています。
(ちなみに塩を小さじ1/三合)
フィチン酸
フィチン酸は金属イオン(ミネラル)
との強い結合性を持っています。
この作用のことを「キレート作用」といいます。
フィチン酸にカルシウムやマグネシウム
などの金属イオン(ミネラル)結合
したものがフィチンです。
玄米の糠にはこのフィチンが含まれるの
ですが、これは体内で消化されるときに
フィチン酸とミネラルに分かれます。
すると、今度はそのフィチン酸が強い
キレート作用で水銀やカドミウムなど
の有害物質と結合します。
結合してしまうと不溶性(水に溶けない)
の状態になるので、体外に排泄されやすく
なります(解毒)。
ところが玄米のフィチン酸が体内に
悪影響を及ぼすという説があります。
これはフィチン酸の強いキレート作用に
よって体内のよいミネラルも体外に排泄
してしまいミネラルの欠乏をもたらすの
ではないかということ。
しかし、繰り返しになりますが玄米の
フィチン酸はフィチンと、カルシウムや
マグネシウムと結合された状態で存在
して体内に入ります。
それがいくら体内のミネラルが結合され
て出ていったからといって、その分入って
くるミネラルも同じだけある訳で、過剰
流出するとは考えづらいと思われます。
2015年のアイオワ大学やコロラド大学の
グループによる研究ではフィチン酸に
よる悪影響は殆どなく、
むしろ癌や血栓・貧血などの予防効果が
あるとの発表もあります。
近年、厚生労働省も米糠から抽出した
フィチン酸の添加物として、人に悪影響
を及ぼすことはないと安全性について
確認しています。(フィチン酸カルシウムの
食品添加物新規指定のための概要書P10)
(※これらの研究は食物中の研究
結果ではなく、添加物としてなので
フェチン酸カルシウムとしての結果
であります。)